前のページへ戻る

  
年の瀬に夢をみた。夕陽と月と朝日が坂の上に並んで浮かんでいた。 「そうだ、写真を撮りに行こう」
静かな大晦日の午後、人のいない八大竜王神社には、注連縄や鏡餅が供えられ新年を迎え入れる準備が整えられていた。木漏れ日が優しく社をつつむ。
夕暮れどき、土地の神様にお神酒をあげたばかりのお婆さんを写真に撮らせてもらう。お婆さんは恥ずかしそうにほっかむりを取って髪を整えた。
撮影が終わると、お婆さんはお辞儀をして、夕陽を眺めながら帰っていった。阿蘇の外輪山に今年最後の夕陽が沈んでいく。

2006年12月31日午後3時
◎木漏れ日がそそぐ静かな大晦日の午後。
(高千穂町 八大竜王神社)
photo
ご神木である大きな榎の木に巻かれた注連縄。 (高千穂町 八大竜王神社)


2006年12月31日午後5時◎外輪山に今年最後の夕陽が沈んでいく。(五ヶ瀬町 桑の内)
 
2006年12月31日午後4時30分
◎お神酒の余りとほっかむりを手にもってパチリ。 (五ヶ瀬町 桑の内)

2006年12月31日午後4時
◎水色のカーテンの奥ではお地蔵さんが笑っていた。 (五ヶ瀬町 桑の内)
 
 

初詣

(高千穂町 高千穂神社)

お正月の神社は楽しい。境内には笑顔と希望が溢れている。写真を撮っていると、消防団の先輩が孫を懐に抱いて家族そろって初詣にきた。 「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
 新年の挨拶をすませて、昨年生まれたばかりの凜ちゃんを撮影させてもらう。まっすぐみつめるその瞳は、カメラを通り越して僕の心を直接みつめているようだった。


2007年1月1日午前1時10分
◎神殿では神楽が奉納されていた。
 
2007年1月1日午前1時30分
◎たくさんの人の願いを聞きいれる神様は偉いなあ。

2007年1月1日午前2時
◎お正月の神社は賑やかで楽しい。
 
2007年1月1日午前1時50分 ◎鎮守の杜の木々の間に月をみつけた。

2007年1月1日午前1時40分 ◎凜ちゃん、初めての初詣。
 

潮花汲み(新富町日置の浜)

(新富町 日置の浜)

空が白々と明けてきた頃、地元のおじさんがポケットに片手をつっこんでやってきた。もう一方の手には木の桶と杓子。桶の中には松の葉が入っている。おじさんは、足を波に濡らしながら、杓子で潮花(海水)をすくい木の桶に流し込むと、片手をポケットにつっこんだまま、背中を丸めて帰っていった。朝日はまだ昇っていない。
 潮花汲みは新富町日置地区に伝わる正月の行事で、その年の始めの潮花を汲み、松の葉を使い、氏神様を始めとし、家の中、家の外、車にいたるまで、一年の平穏を祈りながら祓い清めるものだ。いつの頃から始まったのかは誰も知らない。おじさんに訊いても、「昔からよぉ」と言うばかり。でも、昔から伝わっていて、今も変わらずと、昔の日置の村人も平穏な一年を願っていたのだろうなあ…。

 
2007年1月1日午前6時30分 ◎おじさんが木の桶と杓子を持って潮花を汲む。

2007年1月1日午前6時50分
◎挨拶を交わし、焼酎を呑み、焚き火で暖をとる。
 
2007年1月1日午前6時55分
◎来る人、来る人、まずは一献。

2007年1月1日午前7時
◎受け継がれていく潮花汲み。
 

朝日が昇る

(新富町 日置の浜)

朝日が昇っていく。朝日が昇っていく。暗いうちから焚き火をして、焼酎を呑んで、朝日を待っていたのだから、また格別である。みんな楽しそうだ。
 夢のお告げは何だったのか。夕陽と月と朝日を浴びて心が軽くなったような気もする。見れただけでも幸福なこと。一年の平穏を祈るお正月は幸福の時間。楽しい、楽しい、お正月。たいそうな願いではないけれど、大切な願い。一年の平穏を願って、ご先祖様もお参りしていたのだろうな。きっと、そういうことだろうな。
 心を静めるために夕陽は沈み、心を慰めるために月は浮かぶ。心の平穏を願って朝日が昇るのであれば、世界もまた幸福であるべきだ。

これが、夢のお告げ。
 「今年も良い一年でありますように」


2007年1月1日午前7時20分◎朝日が昇っていく。朝日が昇っていく。
 
2007年1月1日午前7時30分◎ポケットに手をつっこんだまま、器用に潮花を汲み取る。

2007年1月1日午前8時◎朝日が雲のうしろに隠れてしまった。それでも、みんな楽しそう。

前のページへ戻る