山々に霜が降り始める晩秋の頃、高千穂の各集落からは、夜神楽の笛の音が聞こえ始める。 一年の収穫を感謝し、翌年の五穀豊穣を願い、夜を徹して舞われる高千穂夜神楽三十三番。 悠久の歴史の中で、村人が紡いできた神代の物語。神楽宿にしつらえられた神庭には、八百万の神々が舞い遊ぶ。 奉仕者(ほしゃどん)の朗々たる神楽歌に、過去と現在と未来が交錯し、神と人が交わっていく。 かっぽ酒が冷えた体に染み渡り、山の恵みに、ただ感謝する。 |
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夜通し、笛を吹き、太鼓をたたき、舞を遊ぶ。 |
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「将来、子どもたちが大きくなって、よその土地に出て行ったとしても、また帰ってきて夜神楽を舞ってほしい」 子どもたちの、ひたむきな頑張りが目を引く。 |
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永遠の夜が続くように感じられた尾狩の夜神楽にも、ようやく朝が訪れようとしている。尾狩の谷を抜ける強い風が、山の向こうに夜の雲を運んでいく。 |
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舞開きの瞬間、思わず涙がこぼれそうになる 人々は幼い天照大神に何を思う やがて来る明日の光を幼子に託すのか 朝を迎える喜び。舞い明かした喜び 静かに終わりゆく神夜の物語 今日もまた、確かな足あとを残し受け継がれていく夜神楽の詩 村人の祈りの神庭に、清浄の朝日が差し込んでいく |